第二章:最強の筋肉ゴリラ、松風誠
僕は松風誠、身長185センチ、体重90キロどこにでもいる普通の刑務官さ。
これは僕と最愛の人の一ノ瀬鈍平君に出会うまでの話だよ!
一、松風誠の過去
これは僕が刑務官として働いていたときに、初めて迷って傷ついた心の筋肉痛の話だ。
ある月のこと僕は収監されてから一言も話さない死刑囚を担当していた。
もちろん、僕は丁寧に接してきたさ。ただ彼は挨拶も、話しかけても、食事を持ってきたときですら、何も言わない。
今までこんな囚人は見たことがない。
なぜか言葉にはできない違和感を自分の中で感じていた。
そして事件は起きた。
その日は死刑執行の当日、彼を独房から出したときの言葉が頭を離れなかった。
「松風さん、ありがとう、お世話になりました」
数ヶ月も担当していたのに、最後の時まさかお礼を言われるとは思っていなかったんだ。
強い衝撃とショックを受けて、自分は本当に正しかったのか、わからなくなってしまった。
この囚人は何を考えていたのか、自分の職務は何だったのか。
自分は彼の人生にどういう影響を与えたのか、相手は凶悪犯だったにも関わらず最後は一人の人間だった。
覚悟はしていたが、相当堪えてしまった。
今までの自分なら圧倒的な筋肉で脱獄を防いだり、細かいことは考えないタイプだった。
しかし今の状況はわからないし、とても苦しい。
これが心の筋肉痛なのかと初めて思った僕は、上司に有休取得を申請した。
「所長申し訳ありません、自己研鑽のために一ヶ月ほど休みをいただきたいです」
松風は深刻な顔をして言った。大胸筋がかつてないほど痛む……
「もちろんだよ!松風君!君はいつも週七勤務、半休で働いているからね」
「さすがに無理しすぎたのだよ!たまには遠慮せずゆっくりと休みなさい」
所長は穏やかにいった。
「はい!所長ありがとうございます!必ずや自分と向き合い更に強くなって帰ってきます!」
松風はいつも通りの雰囲気を崩さずになんとか伝える。
なんて理解のある素晴らしい職場なんだ。
しかし僕の大胸筋は依然として痛むばかりだ……
信頼してくれる人たちのためにも、早くこの問題を解決しなくては……
お知らせ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
試し読みの松風誠編は、三日ごとに連載を更新していきます。
松風の“心の筋肉痛”がどのように変化していくのか、
ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
もし面白いと感じていただけたら、拡散などしていただけると励みになります。
また、WordPressでは裏話や制作メモなども隔週で投稿していく予定です。
よろしければ、また遊びに来てくださいね。
本編はKindleにて、2月上旬発売予定です。


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