私は霧島だ、皆からは霧島教授と呼ばれている。
これは私と鈍平君の出会いの物語だ。
霧島教授の独白
私は全てを持っていた。
知識、財産、名誉地位の全てだ。
人は私を勝ち組だと言うだろう。
とにかく何でもできた自分が空虚だった。
どこまでいっても、想定内。
自分の計算外の事態はまず起きない。
本当につまらない人生だ。
私はエリート街道を走るために、感情を捨ててきた。
喜びや悲しみなどを持っていても勉学や研究の邪魔だと、容赦なく切り捨ててきた。
そして私は眠るときにたまに夢を見る。
そこは暗闇のなかで、誰もいない、誰も助けに来ない。
そしてもう一人の私が現れる。ある意味、恐怖だった。
こんなに辛いことがあるのか、感情を捨てたバチが当たったのか。
ここは鏡のような世界だと、もう一人の私が言ったところで、いつも目が覚める。
起きたときにあれは非論理的だ、あり得ないといって気にしないようにしていた。
その出会いは必然だったのか、今でもわからない。
私は醜い人間観察が好きだ。
人間はどこまでも残酷で愚かになれる。
特にネット社会では、わかりやすい。
文脈の意図を読まずに、瞬間的に攻撃する者。
正義の名の下に特定の個人を集団で袋叩きにする。
本当に救いようがない生き物が、人間だと私は思っていた。
そして私はその醜さを観測者のような立ち位置で見ていた。
こんなネットに救いはない、どこまでも地獄のような世界だ。
そう思っていた私があの文章に出会って変わってしまった……
ある日いつものように、チャットで醜さを見ていたら、ふと気になる文章があった。
それを読んで私は驚愕を受けた。
人生の絶望の日々、希望の光が見えない。
まるで暗闇にとらわれ続けている。
誰も来ない、誰も助けに来ない、この世界にいるのは私だけ。
そこにいるのはもう一人の私?
いらない感情を全て捨てていた私だった。
私が代わりにあなたになってあげるよ。
そしたらあなたは完全な存在になれる。
その方が楽だって。もうたくさん傷ついてきたでしょ?
もう諦めた方が楽だって、あなたはここでずっと生きていくの、この鏡のような世界でね。
鏡の世界ならあなたの都合の良い言葉と感情しかないんだよ。
私は一度どん底に落ちたけど、自分の闇を信じて全てを捨てずにまた立ち上がりたい。
私は生きたいんだ。また何度も傷つくかもしれない。
世界はどこまでも残酷で傷つくことばかり。
それでも私は自分の醜さを認めて、また生きていく。
だってそれが私と彼女の大切な約束だから。
この文章は過去に私が捨てた感情たちの意思のような物を感じた。
そういう考え方がまず非論理的だ。
まるで自分のことのように思えて衝撃を受けて指が震えた。
それも当たり前だ、夢の内容と酷似していた。
いったい誰がこんな文章を書いたんだ?何のために?
そして気づくと私は涙を流していた。
なぜ突然涙が流れ出たのか理由は全くわからない。
こんな非論理的な涙腺の異常などおかしいと思ってしまった。
それでもなぜか涙は止まらない。
私は悟ったこれは誰かに私が言われたかった言葉だと。
それと同時にこんなにも認められて肯定された気持ちは初めてだった。
この感情はなんなんだ、まさかこれが恋なのか。
私は恋なんて非論理的だと思い、涙を流しながら結論を出した。
それと同時にどうしてここまでの狂気を宿した誠実さで文章が作れるのか疑問に思った。
これほどまでに自分を見透かし、救ってくれた存在を私は知りたい。
そのためにはどんなことでもする覚悟だ。
最後に
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
ここまで読んでくださったあなたのために、特別に少しだけこの後の内容をお伝えしますね。
このあと霧島教授は、AIを駆使して、主人公に会おうとします。
そして主人公と出会った瞬間、霧島教授も暴走し、松風を含めた新しい地獄が始まります。
もし面白いと感じていただけたら、拡散などしていただけると励みになります。
また、WordPressでは裏話や制作メモなども隔週で投稿していく予定です。
よろしければ、また遊びに来てくださいね。
本編はKindleにて、2月7日土曜日発売予定です。

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