僕は一ノ瀬鈍平、どこにでもいる普通の31歳。
これは僕が会社を解雇されて、運命の人である凪との出会いまでの話。
一、鈍平会社を解雇される
鈍平は新卒入社したライター会社で働いていた。
本日は人事面談があり、普段の業務をこなしつつ、呼ばれるまで待った。
「ふうー……とりあえず納品は終わったな」
「上司にチャットで報告しよう」
記事を書き終えた鈍平はチャットで上司に報告する。
そして人事部長から新規チャットが送られてきた。
【人事部長】:一ノ瀬君、順番になりましたので、面談室まで来てください。
【鈍平】 :かしこまりました。今から面談室に向かいます。
鈍平は返信した後に、デスクから面談室へ移動した。
「一ノ瀬です、面談にきました」
とりあえず面談室のドアをノックする鈍平。
「どうぞ、入ってください!」
人事部長の声が聞こえてきた。
「失礼します」
鈍平は面談室に入室するが、そこで驚きを隠せない。
なんと人事部長以外に社長が居たからだ。
「やあ、一ノ瀬そこに座りなさい」
社長は忙しいのか、挨拶もなしに着席を求めた。
「はい、社長」
なんだろう?もしかして昇進か!
頑張って七年以上勤めて、ようやく評価されたのかな。
もしそうだったら、嬉しいな。
鈍平は期待するが、すぐに裏切られる。
「一ノ瀬、君はクビだ」
社長は冷たく告げる。
「え?」
ど、どういうことだ!?
なんで突然解雇に!?
鈍平は困惑する。
「お前のその態度が良くないと言っているんだ」
「社会人としての自覚はないのか?」
「聞こえなかったのか?お前はクビだ!」
「クビの理由も教えてやろう!」
「日々の業務に対する姿勢、顧客からのレポートの満足度全てが低い」
「あと最大の理由は、お前の文章力のなさだ」
「数年勤務してきて、中学生レベルの文章力の拙さが改善されなかったからな」
「私は忙しいから、これで失礼する」
「おい、人事部長あとは頼んだぞ」
ボロクソに言って面談室を出て行く社長。
残された鈍平は放心状態だ。
「一ノ瀬君、力になれなくて本当に申し訳なかった……」
人事部長は頭を下げる。
「そんな人事部長、やめてくださいよ……」
「僕が力になれなかったので……」
人事部長は元々、鈍平のポテンシャルに目をつけて、面接し内定をくれた恩人だ。
もう鈍平は頭が状況に追いついていなかった。
「とりあえず来月末に雇用契約は終了になります……」
「残りの有給休暇は全て消費して、なんとか次につなげられるように、私もできるだけサポートするよ」
人事部長は冷静に言った。
「ありがとうございます……今日は挨拶周りをしたら帰宅してもいいでしょうか?」
もう頭が働かないし、仕事にも絶対に集中できない。
これ以上迷惑をかけられない……
どうしたらいいんだ……
鈍平は考えが上手くまとまらない。
「ああ、問題ないよ……」
「無理しないで、まずは休んでくれ」
「一ノ瀬君、数年間ありがとう……」
「どうか諦めないでくれ、君は必ず成功できると私は信じてるよ」
人事部長はどこまでも良い人だ。
「ありがとうございます、今までお世話になりました……」
人事部長は相変わらず良い人だな。
僕が迷惑をかけて足を引っ張ってしまったんだ。
面談室から出て行く鈍平。
とりあえず直属の上司に報告しに行く。
「今お時間よろしいでしょうか?」
鈍平はもう元気がない。
「ああ、問題ないよ。一ノ瀬君」
「さっき人事部長から話は聞いたよ……」
「私も力になれなくて、申し訳なかった……」
直属の上司も面倒見が良く優しい人だ。
「はい……申し訳ありませんでした……」
「僕は皆さんの期待に応えられず、無力で……」
「当然の結果です……」
もう鈍平は立っているのも辛い。
「一ノ瀬君、そんな風に言って欲しくないよ」
「一緒に頑張ってきた過去の君自身にも失礼だよ」
「私は力になれなかったが……」
「一ノ瀬君、最後に一つだけ約束してくれ」
「書くことだけは続けるんだよ」
直属の上司はどこまでも鈍平に寄り添う。
「わかりました……何があっても書き続けます……」
「お世話になりました……」
鈍平は今にも泣きそうだ。
「ああ、元気でね。たまには連絡してくれよ」
直属の上司も少し寂しそうな顔をして言った。
「はぁ……荷物をまとめて帰ろう……」
鈍平は荷物をまとめて、会社のエレベーターへ向かった。
その道中、給湯室で話し声が聞こえてきた。
どうやら仲の良い先輩二人が話しているようだ。
鈍平は挨拶しに行こうとしたが……
内容を聞いてやめた。
「あいつさ、ようやく解雇になったんだよな」
「そうみたいですね!働きやすくなりますよね」
「俺たちの足を引っ張ってたし、煮え切らない態度にむかついてたんだよな」
「結局どうやって一ノ瀬を解雇させるようにしたんですか?」
「ああ、おれが社長に直々に報告してたんだよ!」
「あいつの文章力は中学生レベルだってな!」
「あいつがいなくなって、清々するよ」
「一ノ瀬は絶対に他の会社へ行っても、やっていけるわけがないよな」
それを聞いた鈍平は全速力で走り、階段を駆け下りて会社を出た。
僕は結局何もできなかったんだ……もう何もわからないし、信じられない。
涙を流しながら、最寄り駅に向かって走り続けた。
一ノ瀬の社会人としての人生は終わりを迎える。
最後に
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
正式タイトルが決まりました。
八畳間の地獄-誰も救われない世界で君だけを救う物語-です!
第一章の鈍平編になります。
ここまで読んでくださったあなたのために、特別に少しだけこの後の内容をお伝えしますね。
解雇された鈍平は、ハローワークへ行き現実に打ちのめされ転職活動に失敗します。
もし面白いと感じていただけたら、拡散などしていただけると励みになります。
また、WordPressでは裏話や制作メモなども隔週で投稿していく予定です。
よろしければ、また遊びに来てくださいね。
応援してくださった皆さんのために、2月8日17時~2月11日16時59分まで無料で読めます!

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