温室の告解あるいは過去からの卒業・第三章:冴香の告白

温室の告解、あるいは過去からの卒業

晴兄の手紙を全て話した冴香。

希は黙って手をつなぎ聞いていた。

「これが全部よ」

「晴兄のおかげで、私は希に向き合えたの」

「晴兄の手紙がなかったら、」

「永遠に逃げ続けるつもりだったわ」

震えながら告白する冴香。

「あと晴兄には作家になる夢を諦めるなら、」

「婚約破棄する!大嫌いって……」

「あれだけ酷いこといったのに……」

「手紙の内容は良いことしか、」

「書いてなかったわ……」

「冴香辛いのに話してくれてありがとう」

「晴兄は本当に良い人ね」

「冴香は愛されてて羨ましいわ」

希は笑顔で優しく冴香の頬を撫でる。

「私は晴兄のことをここまで、」

「話した人は希が始めてよ」

「今までは弱さを見せないように努力してきた」

冴香はついに本音をさらけ出す。

「あれ?月代先輩は何で知ってたの?」

希は疑問を口にする。

「月代は元々、親同士が仲良しで、」

「晴兄の親とも親交があったのよ」 

「それで知っていたの」

冴香は慌てて説明する。

「ふふ、慌てちゃって可愛い」

「大丈夫よ」

「冴香のことそれくらいで嫌いにならないわ」

「ねえ、もっと冴香の本音を聞かせてよ」

「あたしは全部聞きたいわ」

「ここにはあたしたちしかいないし……」

「ね?冴香」

再び手を握りしめて冴香に優しくささやく希。

「ええ、希」

「頑張って話してみるわね」

「だから聞いてくれる?」

不安そうに言う冴香。

「もちろんよ」

「大切な冴香のためだもの」

「どんなあなたでも受け入れるわ」

そう言いつつ冴香の頬にキスをする希。

「私ね」

「本音をいうと学園長になれるか不安なの」

「お父様みたいに賢くないし」

「お母様のような経営手腕もない」

「私は良い人間じゃないし」

「人の上に立って導けるかもわからない」

「自分にどんな価値があるのか……」

「全然分からなかったの」

「そしてお父様も、晴兄も死んでしまった」

「お母様とはお互いに、」

「忙しくて疎遠になりかけてる」

「もう全部滅茶苦茶なのよ」

「私は皆みたいに立派になれない」

「学園長にもきっとなれないわ」

「他の人が継いだ方が上手くできる」

「最近そんなことばかり考えてるの」

ため息をつく冴香。

すかさず希は冴香を抱きしめる。

「何言ってるの!」

「冴香ならできるわ」

「立派な学園長になれるわよ」

「これまで必死に努力してきたじゃない」

「あなた自身が夢を諦めていいの?」

「晴兄だって応援してくれてたのに……」

「あたしは冴香のために全てを捧げるわ」 

「何度でも言うけど」

「冴香が学園長になるために、」

「隣で支え続けても恥ずかしくない人間になる」

「もうあたしの人生は、」

「全部冴香のものなのよ」

「たしかに今のあたしは、」

「バカだし頼りないかもしれない!」

「でも冴香のためなら何だってできるわ」

「あなたが秘書になれって、」

「言うならそうするわ」

「そのためならどんな努力も惜しまない」

「元引きこもりをなめないでほしいわ」

「だから一人が不安なら一緒に叶えましょう」

「二人でならできるわ」

「あたしたちのことを笑う人がいるかもしれない」

「バカにしてくる人もね」

「それでも冴香一人が抱え込む必要はないの」

「一緒に笑われて、バカにされよう!」

「何度でも言うけど、」

「あたしは冴香を心から愛してるよ」

「冴香はあたしのことどう思ってる?」

涙を堪えながら希は言う。

「どうして?」

「そこまで私のことを愛してくれるの?」

「私は希に何もできていないわ」

「それどころか苦しめてるだけ……」

「もう自分の大切な人がいなくなるのは、」

「耐えられないのよ」

「お父様も晴兄もいなくなって……」

「今度は希と付き合っても、」

「いなくなるかもしれない」

「それが恐ろしくて仕方ないわ」

「もう一人は嫌なのよ」

「希と出会って自分を、」

「少しだけ好きになり始めてた」

「でも文化祭のあの日に希にキスされて……」

「全然嫌じゃなかったのに……」

「晴兄って縋りついた弱くてダメな自分に、」

「失望されると思ったから逃げたの」

「私は自分に自信がないの」

「学園長なんてとんだ夢だわ」

「自分が生きるのに精一杯なのに」

「希が羨ましいわ」

「いつも真っ直ぐで優しいから」

「たしかに希と一緒に暮らしたら楽しいでしょうね」

「でも私は醜さをさらけ出すのがまだ怖い……」

「あとあなたは強すぎる」

「それと同時に愛してるの」

「もう頭の中がぐちゃぐちゃよ」

「私どうしたらいいの?」

「あなたのことを好きになってもいいの?」

「失望しないと言いつつ、」

「いざ出て行ったら耐えられない」

「私が学園長になるために、」

「一緒に頑張ってくれる?」

ついに冴香は泣き始めて、希にすがりつく。

そんな冴香を希は優しく頭を撫でながら言う。

「当たり前でしょ」

「あたしは冴香のためなら何だってするわ」

「不安な気持ちを全部、」
「話してくれてありがとう」

「いつものかっこいい冴香」

「今の本音をぶちまけた冴香」

「両方あたしは大好きよ」

「あたしは絶対に冴香を裏切らないわ」

「ボロボロだったあたしを、」

「救ってくれた命の恩人を見捨てるものですか!」

「今度はあたしが全てをかけて、」

「冴香に恩返しする番よ」

「一緒に学園長になるために頑張りましょう」

「あたしたちなら良い学園にできるわ」

「経営手腕も今からお母様から学べばいいし」

「あたしも付属の大学で勉強するし」

「最愛のあなたのためだから辛くない」

「むしろあなたの夢を応援できるなら安いものよ」

「まだ不安なら言うね」

「冴香を一生かけて幸せにするわ」

「孤独な王女様」

「全部引っくるめてあなたを愛してるの」

すり傷だらけの膝をついてプロポーズする希。

「だからあたしと付き合ってください」

「もう先にキスしちゃったけど……」

「指輪もそのうち用意するわ」

希は宣言する。

「はい……よろしくお願いします……」

冴香はすっかり希に逆プロポーズされて、嬉しさで悶絶しながら答える。

最後に

冴香と希は無事に付き合いましたが、今後どうなるのか……

まだ誰にもわかりません。

二人ならきっと大丈夫。

続きは週一で更新していきます!

よろしくお願いします!

PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました