いつも通り愛妻弁当を持参して、風紀委員の会議室に入る静香。
中では不敵な笑みで、みや子が待っていた。
「はぁ……」
「静香……」
「ごめんなさい……」
有無を言わさずみや子は静香にすがりついてきた。
「どうしたの?」
「あたしは気にしてないよ」
会議室の鍵を閉めながら言う静香。
「私があなたに酷いことを言ってしまったから……」
「耐えられなかったのよ……」
静香の匂いをわざとらしく嗅ぐみや子。
「大丈夫だよ」
「ただみや子は仕事してるだけじゃない」
みや子の頭を優しく撫でながら静香はささやく。
「真緒さんにも嫉妬してしまうし……」
「小さい女だなって思ったの……」
「静香の大切な友人なのに……」
「気にしないで」
「みや子は真面目すぎるんだよ」
「お願い……」
「キスして?」
「もちろん」
「何回でもするよ」
「昼休みはまだあるしね」
そう言って優しくみや子にキスする静香。
「落ち着いたわ……」
「ありがとう」
「お昼食べましょうか……」
「うん」
「お腹空いたよ」
「体育があったし」
「相変わらず体育の時間の静香はかっこいいわ」
「ねえ、食べ終わったら膝枕して?」
「もう今日は本当に甘えん坊だね」
「いったいどうしたの?」
弁当箱を開ける静香。
「美味しそう!」
「いつもお弁当作ってくれてありがとう」
「みーちゃんは天才だね」
遠足にいった小学生のように大喜びする静香。
「いいのよ」
「静香のためだから……」
「いくらでも作るわ」
「みーちゃん」
「食べ終わったら膝枕と……」
「ついでにキスしてあげるよ」
「嬉しいわ……」
「もう言葉も出てこないくらい……」
とろけた顔をするみや子。
「大げさだな~」
「でも卵焼きも鮭も美味しいよ」
「鮭なんか骨抜きされてるし!」
「だからご褒美だよ」
「ええ……」
「早く食べてしまいましょう」
ガツガツと凄まじい勢いで食べ始めるみや子。
「みーちゃんもお腹空いてるんだね」
「ゆっくり食べないと詰まっちゃうよ」
「可愛いんだから……」
「うぐっ……」
口を押さえて苦しみ出すみや子。
「みーちゃん!?大丈夫?」
「お水飲む?」
ペットボトルの水を手渡す。
「ありがとう」
「なんとか助かったわ」
「死にかけたからキスして……」
「もうどんな理論なの!」
「先にご飯食べ終わってからね」
「水を飲ませてくれてもいいのよ?」
「はいはい」
「どうぞ!」
「静香の優しさに甘えてるのはいけないと思ってるのよ」
「でもズルズルと引きずられてしまうわ」
「いいんだよ」
「はい、あーん」
「卵焼き食べて!」
「ありがとう」
「職権乱用だわ……」
「別にいいじゃん」
「こうやって会えてるんだからさ」
「そうね」
「それにしても真緒さんとは……」
「ずいぶんと仲が良いのね」
「入学式で会ってからずっと仲良いからさ……」
「友人多いのは良いことじゃない?」
「たしかにね」
「てかみや子はあたし以外に友達いるの?」
「いないわ」
「あなた以外いらない」
「そ、そうなんだね」
「でも問題なく学校で生活できてるし」
「必要なの?」
「それに表向きはこんな性格だし」
「静香以外には好かれないわ」
みや子は弁当を食べ終わる。
「そこまで言う必要ないじゃん」
「あたし以外の人とも、」
「仲良くなったほうがいいよ」
「もし何かあったときにさ」
「わかったわ……」
「検討してみる」
「早く膝枕して……」
みや子は完全におかしくなっている。
「もうちょっとで食べ終わるからさ」
「待っててよ」
「お弁当の量がすごくてさ」
「食べ終わるのに時間がかかっちゃう」
「腕組むのはありよね?」
「左腕は使ってないからいいよ」
「相変わらずたくましい腕だわ……」
「それは筋肉もりもりってこと!?」
「違うわよ」
「上腕二頭筋が綺麗だなって思ったの……」
「えー!?」
「褒められてるの?」
それから数分後……
「みーちゃん食べ終わったよ」
「ごちそうさまでした」
「ご褒美のキスだね……」
どちらからでもなく自然とキスする二人。
「ありがとう……」
「早く膝枕……」
「はい、どうぞ」
膝枕を堪能し、感嘆とする。
「はぁ……幸せだわ……」
「生きてる感じがする」
「そういえば最近は後輩と仲が良さそうで……」
「羨ましいわ」
「え?」
「誰のこと?」
「絵里さんよ」
冷たく言い放つみや子。
静香からどんな顔をしているかは見えなかった。
「あー!」
「絵里ちゃんか!」
「あの子は優しくて真面目なんだよ」
「バスケも上手だしね」
「あたしよりもすぐに上達するよ」
「優秀な人が多いから……」
「絵里ちゃんは優秀だけど……」
「それを絶対に自慢したりしないよ」
「本当にどこまでも真っ直ぐでさ」
「羨ましいよ」
「絵里さんのことが好きなの?」
無意識に右の拳を握りしめるみや子。
「うーん、どうなんだろう」
「わからないのが正直なところだね」
「そのうち告白されるんじゃないの?」
静香の太ももをつねながらみや子は言う。
「え?」
「絵里ちゃんが!?」
「なんで!?」
「あなたの態度と絵里さんの顔を見ればね……」
「絵里さんいつもあなたと話してるときは……」
「嬉しそうだわ」
「仲良しだから嬉しいね」
「まあ告白なんかしてこないと思うよ」
「こんなデカい女好きにならないし」
「絵里ちゃんは真緒が好きなんだよ」
鈍感すぎて少しだけ絵里とみや子が気の毒であった。
「毎日熱心に何か相談してるし」
「静香もたいがい鈍感ね……」
「絵里さんが少しだけ可哀想」
「まあ絶対に譲らないけど……」
「よくわからないけど……」
「絵里ちゃんとは、」
「これからも仲良くしたいな」
静香はにかみながら話している。
「絵里さんのこと大事なのね」
「まあね」
「後輩だし」
「もしかして……」
「嫉妬してるの?」
静香が何気なく聞いた瞬間……
「そうね」
「いつも二人が親密だから」
「頭がおかしくなりそうよ……」
「キスして?」
みや子は嫉妬に狂ってしまう。
「おねだりされたら断れないよ」
「気が済むまでしてあげる」
二人は再びキスし始めた。
「嘘でしょう……」
「静香先輩と風紀委員がキスしてる!?」
「しかも付き合ってないのに……」
「絶対おかしいよ……」
なんと絵里は廊下で、
偶然二人の会話を聞いてしまった。
「放課後、静香先輩を呼ぶしかないわ……」
「あの異常者から助けないと……」
「私の気持ちを伝えるんだ」
「先輩を洗脳から救ってみせる」
絵里は決意する。
だが空は既に曇り始めていた。
午後からは大雨と雷が鳴り始めるだろう……
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