第三章:二人の昼休み

雨上がり、それでも三人でいたい

いつも通り愛妻弁当を持参して、風紀委員の会議室に入る静香。

中では不敵な笑みで、みや子が待っていた。

「はぁ……」

「静香……」

「ごめんなさい……」

有無を言わさずみや子は静香にすがりついてきた。

「どうしたの?」

「あたしは気にしてないよ」

会議室の鍵を閉めながら言う静香。

「私があなたに酷いことを言ってしまったから……」

「耐えられなかったのよ……」

静香の匂いをわざとらしく嗅ぐみや子。

「大丈夫だよ」

「ただみや子は仕事してるだけじゃない」

みや子の頭を優しく撫でながら静香はささやく。

「真緒さんにも嫉妬してしまうし……」

「小さい女だなって思ったの……」

「静香の大切な友人なのに……」

「気にしないで」

「みや子は真面目すぎるんだよ」

「お願い……」

「キスして?」

「もちろん」

「何回でもするよ」

「昼休みはまだあるしね」

そう言って優しくみや子にキスする静香。

「落ち着いたわ……」

「ありがとう」

「お昼食べましょうか……」

「うん」

「お腹空いたよ」

「体育があったし」

「相変わらず体育の時間の静香はかっこいいわ」

「ねえ、食べ終わったら膝枕して?」

「もう今日は本当に甘えん坊だね」
「いったいどうしたの?」

弁当箱を開ける静香。

「美味しそう!」

「いつもお弁当作ってくれてありがとう」

「みーちゃんは天才だね」

遠足にいった小学生のように大喜びする静香。

「いいのよ」

「静香のためだから……」

「いくらでも作るわ」

「みーちゃん」

「食べ終わったら膝枕と……」

「ついでにキスしてあげるよ」

「嬉しいわ……」

「もう言葉も出てこないくらい……」

とろけた顔をするみや子。

「大げさだな~」

「でも卵焼きも鮭も美味しいよ」

「鮭なんか骨抜きされてるし!」

「だからご褒美だよ」

「ええ……」

「早く食べてしまいましょう」

ガツガツと凄まじい勢いで食べ始めるみや子。

「みーちゃんもお腹空いてるんだね」

「ゆっくり食べないと詰まっちゃうよ」

「可愛いんだから……」

「うぐっ……」

口を押さえて苦しみ出すみや子。

「みーちゃん!?大丈夫?」

「お水飲む?」
ペットボトルの水を手渡す。

「ありがとう」

「なんとか助かったわ」

「死にかけたからキスして……」

「もうどんな理論なの!」

「先にご飯食べ終わってからね」

「水を飲ませてくれてもいいのよ?」

「はいはい」

「どうぞ!」

「静香の優しさに甘えてるのはいけないと思ってるのよ」

「でもズルズルと引きずられてしまうわ」

「いいんだよ」

「はい、あーん」

「卵焼き食べて!」

「ありがとう」

「職権乱用だわ……」

「別にいいじゃん」

「こうやって会えてるんだからさ」

「そうね」

「それにしても真緒さんとは……」

「ずいぶんと仲が良いのね」

「入学式で会ってからずっと仲良いからさ……」

「友人多いのは良いことじゃない?」

「たしかにね」

「てかみや子はあたし以外に友達いるの?」

「いないわ」

「あなた以外いらない」

「そ、そうなんだね」

「でも問題なく学校で生活できてるし」

「必要なの?」

「それに表向きはこんな性格だし」

「静香以外には好かれないわ」

みや子は弁当を食べ終わる。

「そこまで言う必要ないじゃん」

「あたし以外の人とも、」

「仲良くなったほうがいいよ」

「もし何かあったときにさ」

「わかったわ……」

「検討してみる」

「早く膝枕して……」
みや子は完全におかしくなっている。

「もうちょっとで食べ終わるからさ」

「待っててよ」

「お弁当の量がすごくてさ」

「食べ終わるのに時間がかかっちゃう」

「腕組むのはありよね?」

「左腕は使ってないからいいよ」

「相変わらずたくましい腕だわ……」

「それは筋肉もりもりってこと!?」

「違うわよ」

「上腕二頭筋が綺麗だなって思ったの……」

「えー!?」

「褒められてるの?」

それから数分後……

「みーちゃん食べ終わったよ」

「ごちそうさまでした」

「ご褒美のキスだね……」

どちらからでもなく自然とキスする二人。

「ありがとう……」

「早く膝枕……」

「はい、どうぞ」
膝枕を堪能し、感嘆とする。

「はぁ……幸せだわ……」

「生きてる感じがする」

「そういえば最近は後輩と仲が良さそうで……」

「羨ましいわ」

「え?」

「誰のこと?」

「絵里さんよ」

冷たく言い放つみや子。

静香からどんな顔をしているかは見えなかった。

「あー!」

「絵里ちゃんか!」

「あの子は優しくて真面目なんだよ」

「バスケも上手だしね」

「あたしよりもすぐに上達するよ」

「優秀な人が多いから……」

「絵里ちゃんは優秀だけど……」

「それを絶対に自慢したりしないよ」

「本当にどこまでも真っ直ぐでさ」

「羨ましいよ」

「絵里さんのことが好きなの?」

無意識に右の拳を握りしめるみや子。

「うーん、どうなんだろう」

「わからないのが正直なところだね」

「そのうち告白されるんじゃないの?」

静香の太ももをつねながらみや子は言う。

「え?」

「絵里ちゃんが!?」

「なんで!?」

「あなたの態度と絵里さんの顔を見ればね……」

「絵里さんいつもあなたと話してるときは……」

「嬉しそうだわ」

「仲良しだから嬉しいね」

「まあ告白なんかしてこないと思うよ」

「こんなデカい女好きにならないし」

「絵里ちゃんは真緒が好きなんだよ」
鈍感すぎて少しだけ絵里とみや子が気の毒であった。

「毎日熱心に何か相談してるし」

「静香もたいがい鈍感ね……」

「絵里さんが少しだけ可哀想」

「まあ絶対に譲らないけど……」

「よくわからないけど……」

「絵里ちゃんとは、」
「これからも仲良くしたいな」
静香はにかみながら話している。

「絵里さんのこと大事なのね」

「まあね」

「後輩だし」

「もしかして……」

「嫉妬してるの?」
静香が何気なく聞いた瞬間……

「そうね」

「いつも二人が親密だから」

「頭がおかしくなりそうよ……」

「キスして?」
みや子は嫉妬に狂ってしまう。

「おねだりされたら断れないよ」

「気が済むまでしてあげる」

二人は再びキスし始めた。

「嘘でしょう……」

「静香先輩と風紀委員がキスしてる!?」

「しかも付き合ってないのに……」

「絶対おかしいよ……」

なんと絵里は廊下で、

偶然二人の会話を聞いてしまった。

「放課後、静香先輩を呼ぶしかないわ……」

「あの異常者から助けないと……」

「私の気持ちを伝えるんだ」

「先輩を洗脳から救ってみせる」

絵里は決意する。

だが空は既に曇り始めていた。

午後からは大雨と雷が鳴り始めるだろう……

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