突然菜月さんとデートをすることになったよ!
意味が分からないな!
まさか勉強のご褒美?
「新垣」
「行きましょうか」
手をつないだまま二人は図書室から出て行き、
昇降口へと向かって歩き続ける。
「あの~……」
いくらなんでもずっと手を、
つないだままって……
緊張しすぎて無理……
「どうしたの?」
菜月はキョトンとした顔で、
澪奈を見つめてくる。
「いえ……」
「あなた」
「本当に大丈夫?」
「はい……」
図書室のあった二階から階段を下りて、
まっすぐ昇降口へ向かう。
「今日は私がエスコートするわ」
「まあデートするのは初めてだけど……」
「そ、そうなんですか!?」
やっぱり菜月さんは、
私に好意を持ってるの!?
しかも初めてのデートなのかな……
下駄箱で靴を出しながら、
澪奈は考え込んでいた。
「どうして……」
「私を誘ってくれたんですか?」
「菜月さんなら……」
「もっといい男」
「いい女を誘えるのにって?」
「心を読まないでください!」
「読んでないわ」
「顔に書いてあるのよ」
「あなた」
「意外とわかりやすいし」
「ぐっ……」
「何も言い返せない……」
「ふふふ」
「可愛いわね」
「新垣」
菜月はモデル顔負けの笑顔であった。
「え?」
百点満点の笑顔で話さないで……
「あ……」
菜月自身も無自覚に褒めていたことを、
今更気づいたのであった。
本来の目的を忘れていないか?
「と、とりあえず……」
「駅に向かうわよ!」
照れ隠しか声がうわずってしまう。
「はい!」
澪奈が返事をした瞬間であった。
後ろには……
「みおちゃん?」
「菜月ちゃんとどこ行くの?」
風花はショックのあまり鞄を落としてしまう。
「ふ、ふ、風花さん!?」
まずい、風花さんがなぜ……
どうしよう……
なんて言えば……
「あら、風花」
「どうしたの?」
「菜月ちゃん」
「二人とも手をつないで……」
「仲よさそうだね……」
「あわわ……」
風花さんから、
暗黒のオーラが出てないか?
気のせいだよね?
「ごめんなさい」
「今日約束してた?」
「ううん……」
「してないよ」
「じゃあ平気ね」
「行きましょうか」
「あなた……」
菜月は意味深な発言をする。
「はい……」
澪奈も返事をするが……
困惑し硬直した風花を置いて、
二人は昇降口から出て行った。
「風花さん」
「大丈夫でしょうか?」
「平気でしょう」
「別に約束はしてないし……」
「あなたは……」
「えへへ、これからデートですよ!」
「風花さんごめんなさいとか言うの?」
「言わないです……」
「私は面白みのない女だし」
「あなたは風花のような……」
「おっとりした雰囲気が好きなのよね?」
「……え?」
「私は……」
なぜか私はズキズキと胸が痛んだ……
風花さんへの罪悪感なのか?
それとも違う感情……
「わかりません」
「まあデート楽しみましょう」
「そういえばどこに?」
「ああ、それはね」
「内緒よ……」
駅に向かって歩きながら、
ボソボソと呟く。
「愛花さんは誘わないんですか?」
澪奈よ……
その発言は地雷だぞ……
「は?」
「なんで愛花が出てくるの?」
途端に不機嫌そうな顔になる。
「幼なじみですし」
「釣り合ってるじゃないですか」
よくあるドッキリ企画じゃないよね……
私は自信が無いのかも……
どうしてこんな美人が、
陰キャをデートに誘ってくれるのか……
「愛花は……」
「家族みたいなものよ」
「昔からずっと一緒でね」
「そうなんですか……」
「私はね」
「あなたに興味を持ったのよ」
「いけない?」
「いえ……」
「そんなことは……」
「煮え切らない態度ね」
「何か言いたいことがあるの?」
「菜月さん」
「怒りませんか?」
「ええ」
「怒らないわ」
「言ってみなさい」
「私のこと……」
「好きなんですか?」
「はぁーーー!?」
「いくらなんでも……」
「飛躍しすぎじゃない?」
クールな印象が一気になくなった。
「テスト勉強のしすぎで、」
「バカになってしまったの?」
「元から頭悪いですよ……」
「ごめんなさい」
「傷つけるつもりはなかったの」
「気分転換になるかなと思ってね」
「ずっと勉強してても……」
「疲れるでしょう?」
「はい……」
私はダメ人間で、
引きこもり陰キャなんだ……
「そんなに悲しい顔しないで」
澪奈の頬を優しく撫でて慰める。
「あなたは良く頑張ってるわ」
「諦めずにね」
「ありがとうございます……」
あっという間に駅に到着した。
「少しだけ遠出になるけど……」
「明日は土曜日だし」
「平気よね?」
「大丈夫です」
「うちはもう姉しかいないので……」
「厳しくありません」
「そうなのね……」
「遅くなりそうなら……」
「連絡入れればいいだけなので……」
「なら思いっきりデート」
「楽しみましょう」
「あなた!」
手を引きながら、
駅の改札を駆け足で、
通り抜けて電車に飛び乗る二人。
「危ないですよ!?」
「そう?」
「スリルあったでしょう?」
二人は車内の二人用の座席に座り、
夕焼けを眺める。
「綺麗ですね!」
「そうね」
菜月は夕焼けなど見ていなかった。
隣に座って嬉しそうな表情で、
夕焼けを眺める澪奈に、
言語化できない気持ちを抱えている。
「ねえ」
「あなた」
「何ですか?」
「今日はありがと……」
頬を赤く染めながら、
微笑むのであった。
「まだデート始まったばかりなのに……」
「おかしな人ですね」
「菜月さんは!」
菜月さん照れて可愛い……
お父さん、お母さん。
私はもうノンケ卒業するよ。
澪奈は亡き両親に誓う。
「あなたもね」
「こんなに幸せでいいのかな……」
「いいの」
「あなたの人生はこれからだし」
無意識のうちに菜月はほくそ笑む。
「菜月さん……」
「す……」
「あ、次の駅で乗り換えだから」
「降りましょうか」
これがお預けなのか……
「は、はい」
私……
今なんて言おうとしたんだろ……
そわそわとして落ち着かないよ……
二人は乗り換え駅から、
更に遠くへと向かっていく。
果たしてどこに向かっているのか。
まだ誰にもわからない。
最後に
もはや沼にはまり始めた菜月さん。
第四章は本格的なデート回です!
それでは次回もよろしくお願いします!
いつも読んでくださり、ありがとうございます!
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