菜月さんと電車で旅に出てしまったよ!
どこに行くのかは全然わからないけどね!
「菜月さん……」
「そろそろつきますか?」
ウトウトしながら話しかける。
「ええ」
「もうすぐよ」
一時間以上電車に乗っており、
澪奈は眠くなってきた。
田舎の海沿いの街へと電車は進んで行く。
「次で終点ね」
「ここで降りるわよ」
「はい……」
目をゴシゴシとこすりながら、答える。
「少しだけ歩くけど……」
「大丈夫?」
「問題ないです」
「行きましょう!」
「ありがとう」
二人は無人に近い改札を出て、
目的の場所まで歩き始める。
「早く着かないかな」
「もうせっかちね」
「焦らされてばかりで……」
「すぐに着くわ」
十五分ほど歩いて、
巨大な水族館が見えてきた。
「え!?」
「水族館じゃないですか」
「お金足りるかな……」
澪奈は慌てて財布を確認し始める。
「そうよ」
「夕方からは料金が安くなるの」
「私が払うから」
「安心してちょうだい」
「そんな悪いですよ」
「気にしないで」
「アルバイトもしてるし」
「あなたのためだから」
慈愛に満ちた優しい表情を浮かべている。
「ううう……」
「情けないです」
「じゃあ一つだけ……」
「言う事何でも聞きます」
私にできることは……
これくらいしかないんだ!
この発言が後に大変な事態を巻き起こすのを、
澪奈はまだ知らない。
「っ……」
「そういうことは……」
「簡単に言わない方がいいわよ」
「さあ、チケット買って」
「楽しみましょう」
「わーい!」
「ありがとうございます!」
菜月の手を握ったまま、
小躍りし始めた。
「あなたね……」
「まあいいわ」
菜月は呆れつつもチケット販売窓口へ向かう。
「いらっしゃいませ」
「何名様でしょうか?」
受付の女性が朗らかな笑顔で対応する。
「アフター四チケット二枚ください」
「もしかして……」
「お二人はカップルでしょうか?」
「そしたらカップル割引が適用されます」
「え……」
菜月が戸惑っている間に……
澪奈は余計なことを言い始める。
「はい!」
「カップルですよ!」
「今日が付き合い始めて、」
「最初のデートになります!」
「ちょ……」
「新垣……」
「そうなんですか!」
「おめでとうございます!」
「カップル割引適用させて頂きますね」
「あとはなんとお客様たちが、」
「来場者百万人目ということで……」
「水族館内のホテルやレストランも、」
「無料でご招待します!」
「本当ですか!?」
「やりましたね!」
「菜月さん!!!」
目がキラキラと輝き、
大声で叫び散らす澪奈であった。
この水族館はどういう経営方針なんだ。
マーケティング戦略がおかしくないか……
「この特別なリストバンドをどうぞ」
「すぐに対応してくれます」
ピンク色の可愛いジンベエザメが、
プリントされていた。
「ありがとうございます……」
「じゃあ行きましょうか……」
「あなた」
二人は恥ずかしそうに、
お互いの手首につけあう。
「いってらっしゃいませ!」
「末永くお幸せに!」
完全にハネムーンのような言い方だ。
「なんだかとんでもないことに……」
「なってしまったわね……」
菜月は少々ゲンナリしてしまう。
「今日はお泊まりして帰りましょう!」
「全部無料ですよ!」
「ええ……」
「わかったわ……」
「はぁ……」
今度は澪奈が菜月の手を引いて、
水族館の中に入っていく。
「すごい!!!」
「魚のトンネル通路だ!」
はしゃぎながら、
湾曲した水槽の前で騒いでいる。
「綺麗ね……」
水槽を見つつも、
はしゃいでいる澪奈に、
目線が向いてしまう。
「何回かきたことあるんですか?」
「ええ」
「昔に何度か……」
「さすがですね!」
「菜月さん!」
満面の笑みを浮かべている。
「奥の水槽もすごそう!」
「ジンベエザメが五匹もいるらしいですよ!」
「早く見たいな」
「行きましょうか」
「はい!」
二人は恋人つなぎにして、
奥の巨大水槽に向かう。
「大きい!」
澪奈の感想は当たり前だろう。
幅四十メートル、高さ十メートルの超巨大水槽だ。
ジンベエザメ、オニイトマキエイ、その他大量の魚たちが、
悠々自適に泳ぎ回っている。
「何度来ても……」
「圧巻ね」
「飛び込んで泳いでもいいですか?」
「どうぞ」
「サメに食べられてもしらないわよ」
「そんなこといって……」
「いざとなったら助けてくれるんでしょう?」
「しらないわ」
「あなたが食べられてる姿をみて」
「高笑いしてるかもね」
意地悪そうに笑う。
「もう……」
「ツンデレなんですから!」
「あなた……」
「その言葉の意味わかってる?」
「菜月さんみたいな人のことを、」
「言うんですよね!!!」
「はぁ……」
「違うと思うわ……」
澪奈よ、クーデレの間違いじゃないか?
「えへへ」
「この際、何でもいいですね」
「まったく笑えないわ」
「え!?」
「サメの館があるんだ!」
「行きたい!」
「どうしたの?」
「ダルマザメの飼育と餌やりがあるみたいで!」
「あとはサメダンスが楽しめる特殊水槽も!」
「あっ……ごめんなさい……」
凄まじいテンションの高さで、
菜月は気圧されてしまう。
「そんなに人気なの?」
「行ってみる?」
「はい!!!」
「菜月さん!」
こうしてジンベエザメと別れを告げて、
サメの館に向かう二人。
そしてサメダンスとは一体何なのか……
危険な儀式にしか思えない。
最後に
今回はついにデートが始まりました!
幸せな二人を見届けてくださいね。
次回からサメがやたらと出てきます!
お楽しみに!
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