第五章:謎過ぎるサメの館で

澪奈と菜月さん! 澪奈と菜月さん!

私と菜月さんはサメの館に行くぞ!!!

というかサメの館ってなんだよ!

「新垣」

「着いたわね」

「はい!」

「サメの館だ!」

サメの館は水族館内の敷地にあり、

海側に面していた。

「建物大きいですね!」

「ええ……」

「前に来たときはなかったわ」

施設の中でも最大規模であり、

数百メートルの大きさだ。

「えへへ」

「行きましょう!」

「はいはい」

「何がきても驚かないわ」

そう言って入館する二人だったが……

考えが甘かった。

「はーい!!!」

「皆さん!」

「これからダルマザメたちの餌やりが始まります!」

「17時30分から、」

「ダルマワールドで待ってますね!」

アナウンスの女性はテンションが異常に高い。

恐らくサメの館の館長だろう。

「ダルマワールド?」

「新垣わかる?」

「わかりません……」

「けど楽しそう!!!」

子供のように大はしゃぎして、

飛び跳ねている。

「ふふ……」

「可愛い……」

菜月は小声でつぶやき、

見つめ続けていた。

サメの洞窟や水槽を見ながら、

歩き続けて、中央部のダルマワールドにたどり着いた。

珍しいサメや標本が大量に展示されている。

「ダルマワールドだ!!!」

「菜月さん!」

「見てください!」

「ダルマザメですよ!」

嬉しさのあまり涙を流し始めていた。

「あなた」

「落ち着いて」

「ほら、これでふいてあげるわ」

ハンカチで涙をふき始める。

「すいません……」

「テンションが上がりすぎて……」

「見てればわかるわ」

「ダルマザメはどんなサメなの?」

菜月よ……

それは禁句だ。

「よくぞ」

「聞いてくれましたね!」

「見てください!」

ダルマザメの大群が飼育された水槽を、

嬉しそうに指さす。

「体長は三十~五十センチメートルで……」

「小さいですけど……」

「最大の特徴は捕食方法ですね!」

「吸盤みたいな口と、」

「下あごのノコギリみたいに、」

「鋭い歯があって……」

「自分より大きいマグロやイルカ、」

「クジラとかに噛みついて全身を使って、」

「よじって引きちぎるんです!!!」

澪奈は興奮しすぎて、

鼻血がこぼれ始めた。

本当にこの女は大丈夫なのか?

「あーあ……」

「鼻血でてるわよ」

「しっかりしなさい」

文句を言いつつも、

愛しそうにハンカチでふく。

「あ……」

「汚れちゃいますよ……」

「今更そんなこと気にするの?」

「いえ……」

「新垣」

「私トイレに行ってくるわね」

「お腹痛いんですか?」

「少しだけね」

「エアコンが効いてて……」

「冷えてしまったの」

「わかりました」

「ダルマワールドにいるので……」

「ええ」

「すぐに治ると思うわ」

「ごめんなさいね」

すごい勢いで群衆をかき分けて、

女子トイレの個室に駆け込む。

「澪奈……」

「こんな私のこと……」

「好きになってくれないわよね……」

「ごめんなさい……」

ハンカチについた血を、

鋭く尖った二本の犬歯で吸い取った。

「もう血は千年以上吸ってないのに……」

「美味しい……」

「我慢できなかった……」

「全部愛花のせいよ……」

「あなたが澪奈の……」

「探りを入れてくれって……」

「言わなければ……」

「澪奈を愛することもなかったのに……」

「ただ彼女を守れれば……」

「それで良かったのに……」

菜月は便器に座り込み、

堪えきれずにむせび泣く。

もはやサメダンスどころではない。

サメオタクで変人の澪奈は菜月を助けられるのか。

最後に

菜月さんの正体はいったいなんなのか。

ダルマザメの餌やりはまともではなさそうだ。

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