私と菜月さんはサメの館に行くぞ!!!
というかサメの館ってなんだよ!
「新垣」
「着いたわね」
「はい!」
「サメの館だ!」
サメの館は水族館内の敷地にあり、
海側に面していた。
「建物大きいですね!」
「ええ……」
「前に来たときはなかったわ」
施設の中でも最大規模であり、
数百メートルの大きさだ。
「えへへ」
「行きましょう!」
「はいはい」
「何がきても驚かないわ」
そう言って入館する二人だったが……
考えが甘かった。
「はーい!!!」
「皆さん!」
「これからダルマザメたちの餌やりが始まります!」
「17時30分から、」
「ダルマワールドで待ってますね!」
アナウンスの女性はテンションが異常に高い。
恐らくサメの館の館長だろう。
「ダルマワールド?」
「新垣わかる?」
「わかりません……」
「けど楽しそう!!!」
子供のように大はしゃぎして、
飛び跳ねている。
「ふふ……」
「可愛い……」
菜月は小声でつぶやき、
見つめ続けていた。
サメの洞窟や水槽を見ながら、
歩き続けて、中央部のダルマワールドにたどり着いた。
珍しいサメや標本が大量に展示されている。
「ダルマワールドだ!!!」
「菜月さん!」
「見てください!」
「ダルマザメですよ!」
嬉しさのあまり涙を流し始めていた。
「あなた」
「落ち着いて」
「ほら、これでふいてあげるわ」
ハンカチで涙をふき始める。
「すいません……」
「テンションが上がりすぎて……」
「見てればわかるわ」
「ダルマザメはどんなサメなの?」
菜月よ……
それは禁句だ。
「よくぞ」
「聞いてくれましたね!」
「見てください!」
ダルマザメの大群が飼育された水槽を、
嬉しそうに指さす。
「体長は三十~五十センチメートルで……」
「小さいですけど……」
「最大の特徴は捕食方法ですね!」
「吸盤みたいな口と、」
「下あごのノコギリみたいに、」
「鋭い歯があって……」
「自分より大きいマグロやイルカ、」
「クジラとかに噛みついて全身を使って、」
「よじって引きちぎるんです!!!」
澪奈は興奮しすぎて、
鼻血がこぼれ始めた。
本当にこの女は大丈夫なのか?
「あーあ……」
「鼻血でてるわよ」
「しっかりしなさい」
文句を言いつつも、
愛しそうにハンカチでふく。
「あ……」
「汚れちゃいますよ……」
「今更そんなこと気にするの?」
「いえ……」
「新垣」
「私トイレに行ってくるわね」
「お腹痛いんですか?」
「少しだけね」
「エアコンが効いてて……」
「冷えてしまったの」
「わかりました」
「ダルマワールドにいるので……」
「ええ」
「すぐに治ると思うわ」
「ごめんなさいね」
すごい勢いで群衆をかき分けて、
女子トイレの個室に駆け込む。
「澪奈……」
「こんな私のこと……」
「好きになってくれないわよね……」
「ごめんなさい……」
ハンカチについた血を、
鋭く尖った二本の犬歯で吸い取った。
「もう血は千年以上吸ってないのに……」
「美味しい……」
「我慢できなかった……」
「全部愛花のせいよ……」
「あなたが澪奈の……」
「探りを入れてくれって……」
「言わなければ……」
「澪奈を愛することもなかったのに……」
「ただ彼女を守れれば……」
「それで良かったのに……」
菜月は便器に座り込み、
堪えきれずにむせび泣く。
もはやサメダンスどころではない。
サメオタクで変人の澪奈は菜月を助けられるのか。
最後に
菜月さんの正体はいったいなんなのか。
ダルマザメの餌やりはまともではなさそうだ。
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